中学生のころ、僕は塾に通っていた。塾の隣にコンビニがあったので、放課後は友人とそこで購入した食べ物を塾に持っていき授業が始まる前に食べるのが習慣だった。
いつもはお菓子やパンだったのだが、ある日友人が購入したとある商品を、試しに自分も買ってみることにした。
それが「ごつ盛り」というカップ焼きそばだった。
イートインのポットでお湯を注ぎ、アチィアチィと言いながら塾の階段を上った。お湯を捨ててソースマヨもろもろまぜて食べてみると衝撃的な味だった。それまであまりカップ麺を食べてこなかったこともあり、僕の舌と脳は強烈な刺激に打たれた。この値段で量はまさにごつ盛り、世の中にはこんなものがあったのか。
それからというもの塾の日には必ずこのごつ盛りを買い、教室で食べるということを繰り返した。これに友人も付き合ってくれたので、教室には二人分のソース焼きそばの匂いが充満し、今考えるとかなり迷惑だったと思う。
ごつ盛りにハマった要因の一つが、からしマヨネーズである。当時は完全なお子様舌だったため、程よい辛味に得も言われぬ中毒性を感じたのである。
しかし、何度も食べるうちに僕はからしマヨネーズの刺激に慣れ舌は鈍化していった。
高校生になってすぐ、学校の目の前にコンビニができた。放課後は財布だけ持ってそのコンビニで買ったものを教室に持ち込んで食べて夕暮れまでだべるという生徒が続出した。僕もそのひとりだった。
そして、このコンビニに普段行っているコンビニでは見かけない商品があることに気づいた。
「ぶぶかの油そば」であった。
ひらがな三文字の意味不明な言葉がでかでかとプリントされた背景には脂ぎった麺が力いっぱいに持ち上げられている。僕は未知との遭遇にごくりと唾を飲み、導かれるように商品をレジに持って行った。イートインでお湯を注ぎ店を出て、さっそく教室で食らいついた。強烈だった。暴力的なまでの脂の多層的な味覚とインスタントとは思えない麺のモチモチした食感。ごつ盛りの衝撃以来、更なる刺激を求め飢えていた脳が満足するのを感じた。僕はその1週間、ぶぶかの油そばを毎日食べてしまった。
しかしながらそれだけハマってしまうと必ず付きまとう現象が慣れである。
これを高校から今まで食べ続けた僕のバカ舌はいよいよ手が付けられなくなっていた。因みにその間ぶぶかのかやくはどんどん少なくなっていた。(いまではあるのかないのか分からない)
もっと刺激を、もっと刺激を。
僕はこの欲望を満足させるために、最近ある解決策を編み出した。
・まず、からしマヨネーズの刺激を取り戻す。
・そして肉を追加する。
コンビニに一品惣菜として並んでいる角煮やチャーシュー、ホットスナックの唐揚げなどを油そばに投入する。最近試したものではサムギョプサルがいい具合だった。
ストレスが溜まった時にはこのようにして油そばを改造し、食べることでストレスを発散させている。いやはや、30代になった時の健康・体型がなんとも楽しみである。
僕と同じように通常の食べ方に飽きて刺激を欲している人が居ましたら是非お試しあれ。